カールフィッシャー法は多くの物質に適用出来ますが、カールフィッシャー試薬と水との反応が一種のヨードメトリーを利用している為、試料中にヨウ素と反応する物質を含む場合には測定値にプラスの誤差を与え、一方ヨウ化物を酸化してヨウ素を生成する物質を含む場合にはマイナスの誤差を与えますので注意が必要です。次表に直接滴定できる化合物、直接滴定はできないが適当な化学反応や操作を修正することによって滴定できる化合物およびカールフィッシャー試薬と反応するため直接滴定不可能な化合物を分類して示します。なお直接滴定不可能な化合物であっても水分気化法などの間接法で水分を測定できることがありますので、弊社あてにお問い合わせください。

妨害化合物の対処法

直接滴定できる化合物

有機化合物
炭化水素(飽和、不飽和化合物)/アルコール、多価アルコール、フェノール類(一部)/エーテル/安定ケトン(ジイソプロピルケトン、ベンゾフェノンなど)/安定アルデヒド(ホルムアルデヒド、クロラールなど)/有機酸、ヒドロキシ酸、アミノ酸/酸無水物/エステル、ラクトン、無機酸エステル、オルトエステル/アミン(弱塩基、pKa9以下)、アミノアルコール/蛋白質/アマイド、アニリド/ニトリル、シアンヒドリン、シアン酸誘導体/ニトロ化合物/オキシム、ヒドロキサム酸/チオシアネート/チオエーテル、チオエステル、チオシアン酸/ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化アシル/糖類/有機酸塩とその水和物
無機化合物
無機酸塩とその水和物/無機酸/キレート化合物/肥料/炭酸カルシウム/ポリタングステン酸塩

特別な処理、条件下で直接滴定できる化合物

化合物 処理方法
活性アルデヒド、活性ケトン 脱水溶剤CP、PPまたはKTX中で滴定する。
強塩基性アミン 陽極液または一般用脱水溶剤に約10gのサリチル酸を添加して測定する。
以下の化合物は古い文献には下記の処理方法で直接滴定できることになっていますが、実際には検討が必要かと思われます。
アンモニア 酢酸を加えて妨害を除く。
第二鉄塩 8-ヒドロキシキノリンを加えて妨害を除く。
ヒドラジン誘導体 酢酸を加えて妨害を除く。
ヒドロキシルアミン塩 二酸化硫黄―ピリジン(1+1)溶液を加える。
メルカプタン オレフィン(オクテンなど)を付加して妨害を除く。
チオ酸 オレフィン(オクテンなど)を付加して妨害を除く。
チオ尿素 オレフィン(オクテンなど)を付加して妨害を除く。

カールフィッシャー試薬と反応して直接滴定できない化合物

有機化合物
アスコルビン酸/ジアシル過酸化物、ペルオキソ酸/キノン
無機化合物
硫化ナトリウム、過酸化ナトリウム/クロム酸塩、重クロム酸塩/酸化鉄、酸化ニッケル/三酸化ヒ素/ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、三酸化ヒ素/ホウ酸類、酸化ホウ素/炭酸水素塩、炭酸塩/金属水酸化物、金属酸化物/亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩/亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸塩/第二銅塩、第一スズ塩